*ふわり、はつこい*
─卒業式後─


式はぼーっと今までの思い出に浸っていると、いつの間にか終わってしまっていた。

哀しいでもなく、嬉しいでもなく、と言ったところ。

まだ実感が沸いていないのかもしれない。

卒業式では川嶋あいの『旅立ちの日に』を歌った。


「ユウカ先輩!」


名前を呼ばれ、私は我に帰る。

今はみんな玄関で別れを惜しむように、写真を撮ったり先生達と話していたりしている。


「・・・?」


名前の呼ばれたほうを見るとそこには小柄な女の子が立っていた。

あたしは記憶を辿って名前を思い出す。

・・・たしか、陸上部の1年の子。名前は・・・


「ミカです!」


あたしは頭の中の考えを読まれたのかと、少しドキリとした。
< 138 / 187 >

この作品をシェア

pagetop