*ふわり、はつこい*
「あぁ、ミカちゃんね。どうしたの?」


あたしはその小柄なミカちゃんに目をやる。

スカートのから覗かせる足はとても細く、簡単に折れてしまいそうだった。


「あの、アタシずっと先輩に憧れてたんです!小学校のときにお兄ちゃんの大会の応援に行ったとき、先輩の走りを見て陸上をすることを決めました!」


ハキハキとした口調の彼女は淡々と続けた。


「もしよかったら先輩のコサージュ、貰えませんか?」


ミカちゃんは少し不安そうな表情を見せて、あたしを見上げた。


「うん、いいよ。そうやって言ってくれる子がいて私も嬉しいしね」

「ありがとうございます!」


あたしは彼女にコサージュを渡した。

彼女は嬉しそうに走り去っていった。

ぼんやりその後姿を眺めていると、


「モテてんなー」


後ろから少し低くなった、アイツの声が聞こえた。
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