*ふわり、はつこい*
「あ!血が出てる。大丈夫?保健室まで歩ける?」


ハル先輩は私の膝を見てそう言った。

だから私も自分の膝を見た。

膝からは赤い血がさっき転んだ拍子に出来た疵口からじわりと滲んでいた。


「だ、大丈夫ですよ。私がボーっとしてたのが悪いんで。すみません」

「うぅん。ごめんね。それより早く保健室に行かなきゃ。黴菌(ばいきん)入っちゃう」


ハル先輩に手を貸してもらいながら起き上がるものの、結構膝の傷が深くて痛んだ。


「俺がついてくよ」


あれ、この声・・・。

声のしたほうを向くと、そこには陽汰先輩がいた。


「今日は谷先生、出張で保健室にいないから。俺、保健員だし、ハルは顧問の先生に言って来て」

「分かった。心向ちゃん頼むね」


陽汰先輩の支持でハル先輩は顧問の先生のところに向かった。


「歩ける?駄目なら俺負ぶってくよ?」


先輩のその言葉に今にも恥ずかしさに悲鳴を上げてしまいそうになったけど堪えて私は返事をした。


「だ、大丈夫ですよ!ただの擦り傷なんで。疵口洗って消毒しておけば」

「そっか。まあ俺の腕なりなんなり掴んで支えにしてくれても構わないから」


先輩はふっと笑った。

ああ。なんでだろう。胸がむず痒いよぉ。
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