*ふわり、はつこい*
レースの結果は先輩のチームが1位。

やっぱり陸上部でもリレーのアンカーやってただけあるな、て改めて思った。


「よし、頑張ろう。行こっ、ユウカちゃん」


私は勢いよく立ち上がった。

なんだか先輩にパワーをもらえて気がしたから。


「はははっ、心向ヤル気満々じゃん」


ユウカちゃんは少し呆れたように笑っていた。


「今の陽汰先輩、なんかカッコよくなかった?」

「あ、うんうん。確かに!彼女とかいるのかな〜?」


不意に聞こえたそんな会話。

嫌でも耳に入ってしまった。

話しているのは他のクラスの名前も知らない女の子達。

先輩を好奇の眼差しで見ている。

あ、またこれ。なんか、胸がジクジクする。頭が重くなって、どこかに沈んでしまうような。深い深い、何かにはまってしまったような。気持ち悪い感覚。


「何してるの、心向。早くしないともうBチームの子達みんなスタート位置についてるよ」


ユウカちゃんにそう言われて気付いた。

私、さっきから足止まってたんだ。


「あ。ご、ごめん。なんかぼーっとしちゃってた」


沼底に沈んでしまったように重い足を私は動かした。

なんでこんなに息をするのも苦しいんだろう。
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