甘ったるい嘘吐き
そのときちょうど、あたしの家の前にたどり着いた。

どちらともなく足を止めて、あたしは振り返る。



「ありがとね真鍋、送ってくれて」

「………」

「……真鍋?」



あたしの呼び掛けにも反応せず、なぜだかじっとこちらを見下ろしてくる真鍋を、不思議に思って見返した。

すると、その形のいいくちびるが、ようやく動く。



「……先輩。今日、同級生の人に告白されたらしいですね」

「……っえ、」



白い息とともに吐き出された、予想もしなかった言葉。

あたしはそれに、思わず目を見開いた。



「な、なんで、それ……」

「俺の友達が、昼休みに先輩が呼び出されてる現場、バッチリ見てまして。……中庭に呼び出されるなんて、ベタですね」

「………」



じっと見下ろされながらの真鍋の話に、なぜか後ろめたいような、そんな何とも言えない気持ちになる。

あたしは目を泳がせながら、あーとかうーとか、単語にもならないことを呟いた。
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