甘ったるい嘘吐き
「……ッ」

「……志乃先輩、」



どこも、触れてなんかいないのに。

ただ、目が合っているだけなのに。

いつもより近い距離に真鍋がいるということだけで、頭が沸騰しそうになる。



《……俺、宮田のことすきなんだ》



今日、川島くんに告白されたときだって。こんなふうには、ならなかった。

……付き合って欲しいって、言われて。

うれしいって気持ちより、何よりも先に。頭に、思い浮かんだのは──。


永遠にも感じられた、数十秒後。

不意に、真鍋が吹き出した。



「……ふっ、」

「ッ!?」

「ふはっ、先輩……顔、真っ赤ですよ」



口元に右手をあて、くつくつと笑う彼の言葉に、バッと頬を両手で包む。

真冬にも関わらず熱いそれは、きっとこの薄ぼんやりとした街灯の下でもわかるくらいに、赤く染まっているのだろう。

真鍋はあたしの横についていた手を離して、先ほどまでよりも少しだけ、距離をとった。
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