ROMANTICA~ロマンチカ~
第三章 水面下で
1.警察署長の受難
高嶺徹(たかみね・とおる)は、肺の奥深くまでタバコの煙を吸いこんだ。
「署長」と書かれたフダが載ったデスクに肘をつき、椅子にふかぶかと腰かけている。
近頃は、嫌煙運動が盛んだ。
愛煙家としては肩身の狭い世の中になった。
駅のホームからは灰皿が撤去され、街角からは禁煙コーナーが消えた。
家に帰れば、女房からはローンの残った家が汚れて臭くなるとにらまれ、
高校生になったばかりの娘からは、
「パパ、臭いから寄らないで」
避けられて、ホタル族。
S警察署内の署長室は、高嶺に残された唯一にして最後のサンクチュアリだった(本当は、喫煙コーナーに行って吸わないといけないのだが)。
「署長」と書かれたフダが載ったデスクに肘をつき、椅子にふかぶかと腰かけている。
近頃は、嫌煙運動が盛んだ。
愛煙家としては肩身の狭い世の中になった。
駅のホームからは灰皿が撤去され、街角からは禁煙コーナーが消えた。
家に帰れば、女房からはローンの残った家が汚れて臭くなるとにらまれ、
高校生になったばかりの娘からは、
「パパ、臭いから寄らないで」
避けられて、ホタル族。
S警察署内の署長室は、高嶺に残された唯一にして最後のサンクチュアリだった(本当は、喫煙コーナーに行って吸わないといけないのだが)。