ROMANTICA~ロマンチカ~
ずっと出なかった涙が、ドバーッとばかりに出てきた。

あたしの顔は、洪水状態。
 
「ほら、泣くな。風呂入ってごはん食べて、勉強しなさい。あんたにピッタリ合った男が絶対どこかにいるから! まだ十八だよ? 色恋について知るにはガキ過ぎる。あたしみたいなオトナの女にならないと、本当の恋を知ることはできないね」
 
「ママ、新しい恋人できたの?」
 
パパが死んでからずっと、ママに新しい恋人ができるかもしれないなんてことは、想像もしたことなかった。
 

「バッカ。どうしてそういう話の展開になるかな……」
 
「ねえ、ママ。もしも、もしもだよ、あたしが生まれてなかったら、パパが死んじゃった後で、違う男の人と再婚したりした? 会社継いだりしないでさ? そうしたら、ママ、あんな苦労しなくってすんだじゃん?」
 

「ううん」
 

ママは即答した。
 

「都季がいなくっても、あたしはパパの後を継いで会社をやっただろうな。

パパがどんな仕事をして、何を見て、毎日何を考えていたか、知りたかった。ちょっとでも、忠信に近付きたかった。あんなイイ男は、他にはちょっといないね」
 
「星の数ほど男はいるって言ったくせに」
 
「だけど、運命の男はオンリーワンだよ」
 

その時、ちょっとだけ、あたしはママに嫉妬した。
 

ママはあたしの髪の毛をクシャクシャして言った。
 

「明日から、予備校行きなさいよ」
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