ROMANTICA~ロマンチカ~
朝方電話が鳴った。無視しようかと思ったけれど、胸騒ぎがして、電話に出た。
 

『警察ですけれど……』
 

ママが事故に遭ったという。警察に来いという。

どうして、病院じゃないの?
 

「御遺体を御確認下さい」
 

白い布の下に、ママがいるという。

嘘だ。

ママはあんなに小さくない。
 

布がめくられる。
 

真っ黒く、焼け焦げた死体。両肘と膝を曲げて、変な格好。

顔もすっかり焼け爛れて、どこの誰さんだかわからない。スネの骨が見えている。骨も真っ黒だ。
 

ママじゃない。ママであるわけがない。
 

左手の薬指、いつも身に着けている結婚指輪。
 

だけど、この死体はママのじゃない。そうなはずないのだ。
 

認めるもんか! 

認めるわけには行かなかった。どうしても。
 

あたしの意思とは裏腹に、あたしの口が言った。
 
「ママの……指輪……」
 

「御確認、ありがとうございました」
 

警察官が、再び白い布を被せた。
 

頭が真っ白になった。
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