ROMANTICA~ロマンチカ~

3.涼輔

「お手柔らかに、ね。

痛いのは苦手なんだ」
 


両手首を後ろ手に縛られる時さえも、氷室涼輔の口調に脅えはなかった。
 


「余計な口を叩くな」
 


その落ち着き払った様子に内心舌を巻きながら、車の後部座席で俊夫は氷室涼輔の手を縛った。
 

氷室涼輔は黙って、皮肉な笑みを浮かべた。

 
「……」

 
指先に痛みが走るが、何気ない顔を装う。

ポーカー・フェイスを保つことには、馴れたものだった。

幼少時からの訓練の賜物かもしれない。
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