ROMANTICA~ロマンチカ~
母一人子一人の、世界にたった一人だけの家族を奪った連中に、今のあたしにとって何より大切な涼輔さんまでを巻きこまれることが、あたしは許せなかった。


ここで一矢報いてやらなければ、あたしは一生後悔するとさえ思った。

 
あたしが下手に暴れたらどうなるか、ちょっと考えればわかりそうなもの。


だが、あたしは考えなかった。


復讐と憎悪の塊だった。
 

靖男が、あたしの猿ぐつわを外そうと、あたしの上に屈みこんだ時、それまでずっと下を向いてためていた力を一気に込めて、あたしは頭を突き上げた。
 


「うわっ!」


 
靖男の顔面を、あたしの頭突きは見事にヒットした。


靖男は鼻血を出しながらひっくり返った。
 


「まったく、だらしないわね」
 


旗丸理恵子は、靖男に冷ややかな一瞥をくれた。
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