ROMANTICA~ロマンチカ~
涼輔さんの顔から笑みが消える。

ずっと攻め続けていた涼輔さんが、そこで初めて後ろに引いた。

やみくもに振り回される角材をよけるうち、ジリジリと壁際に追い詰められる。

手近な場所には角材が落ちていない。
 

「氷室さん、あなたは油断ならない人ね」
 

旗丸理恵子が言った。
 

「今更気づいたか?」
 
「それに、思ったより頭が悪いみたい」
 
「心外だな。そんなことを言われるのは、初めてだ」
 
高城に向かって、
 
「痛めつけるのは構わないけれど、今殺したらダメよ。

身代金を手に入れるまでは、まだ利用価値がある。」
 
< 244 / 369 >

この作品をシェア

pagetop