ROMANTICA~ロマンチカ~
我ながら、頭の悪い子供だったと思う。

軽井沢から東京まで歩いて帰ることなんて、無理だとは、考えもしなかった。
 

あたしは庭に出て、ズンズン歩き出したけれど、門まですらもたどり着かなかった。
 
だんだん薄暗くなって来て、心細くなった。

お腹も空いた。
 

泣くよりも腹が立っていた。

そこにたまたま、氷室家で飼われている真っ黒のジャーマン・シェパードが寝ていたものだから、思わず腹いせにシッポを踏んづけて、怒った犬に追いかけられた。
 

犬が吠えながら追いかけてくるから、あたしは全力疾走した。

犬と出会っても走って逃げてはいけないと知ったのは、大分後のことだった。
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