ROMANTICA~ロマンチカ~
クンクン鼻を鳴らす犬。
 

「おい!」

 
涼輔くんの声。怒りがにじんでる。

 
「立てよ」

 
目を開くと、ブラッキィが、涼輔くんの手をなめていた。

ごめんね、ごめんね、とでも言うように。
 
無理矢理立たされる。


涼輔くんが両手でつかんだ脇の下の辺りに血がついた。

白いワンピースに真っ赤な染みがついた。
 


「謝れ」


 
涼輔くんの右の腕から血が流れ、指先から滴り落ちた血が、地面に点々と模様を描いた。
 

犬からとっさにかばってくれたのだということが、涼輔くんが怪我したのはあたしのせいだということが、アホのあたしにもわかった。
 

「ごめん、なさい……」
 

「ブラッキィにもだ。今のは君が悪い。やっていいことと、悪いことがあるぞ」
 

「ごめんなさい……ウワーン!」
 

犬に向かってあたしは謝り、大声を上げて泣いた。
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