ROMANTICA~ロマンチカ~
あたしの泣き声を聞きつけて、あたしを探していた人たちが集まってきた。
 
涼輔くんの傷は、かなり酷く、傷口がパックリ開き、血がドクドク出ていた。
 

別荘に来ていた武藤院長が応急手当をした。
 

水道水で傷口を洗い流す間も、涼輔くんは歯を食いしばって、一滴も涙をこぼさなかったし、声も出さなかった。
 

ブラッキィに噛まれたいきさつを話す時も、本当はあたしのせいで、あたしが悪いと言えばいいのに、「ブラッキィがトカゲに驚いて、興奮した」としか言わなかった。
 

涼輔くんが唯一悲痛な声を出したのは、おじい様にブラッキィを保健所に連れて行かないように頼んだ時だけだった。
 

おじい様が、

「心配するな。保健所にはやらないから、とにかく病院に行きなさい」


と溜息をついた。


その時になって、やっと涼輔くんは蒼ざめていたけれど、安心した顔をして、武藤院長と原島さんに付き添われて病院に向かった。
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