ROMANTICA~ロマンチカ~
「手、握ってて」
 
「痛くありませんか?」
 
「強く握らなければ、平気」
 


点滴をしていない方の手を、できるだけそうっと握る。
 


「ごめんなさい……あたしのせいで……」
 
「もういい。謝るな。都季のせいじゃないよ。そうしたかったから、しただけ」


 
涼輔さんは間もなく眠りに落ちてしまった。
 
もう、限界だった。


 
「涼輔さん、ごめんね。

あたし、どうして素直になれなかったんだろう。

どうして涼輔さんのこと、言葉にできないくらい好きなのに、今まで好きって言えなかったんだろう……」
 


涼輔さんが眠っているのをいいことに、あたしがどれだけ涼輔さんのことが好きで、涼輔さんがどれほどあたしにとってかけがえのない人かということを、長い時間かけて話した。
 
それから、しばらくの間、手を握っていた。
 

涼輔さんが熟睡しているのを確かめ、寝顔を網膜に焼き付けると、あたしは病室を後にした。
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