ROMANTICA~ロマンチカ~
だから、あたしは涼輔さんのそばにはいられない。

どんなに強く願っても、そばにいると、結局は涼輔さんが傷つく。 
 
こんなに、誰かを守りたいと願ったのは、初めてだ。
 
物語に出てくる女が、「あたしがそばにいることは、相手にとって良くない」と言って、その人の元を去るのを見るたびに思ったものだった。


「バカ! バカ! このバカ女! 

そんなの、あんたが勝手にそう思ってるだけじゃない! 

カッコつけてんじゃないわよ、タコ! 

相思相愛で、相手だってそばにいろって言ってくれてるんだもん、いればいいじゃない、甘えちゃえばいいじゃない! 

相手と一緒にいて、苦しい時を供に乗り越えればいいじゃない!」って。


 
だけど、本当に大切な人には、傷ついて欲しくない。

苦しんで欲しくない。

厳しい道を、あえて歩んではもらいたくない。


それは、もしかすると、傷つく相手を目の当たりにして、苦しい思いをするであろう自分からの逃避なのかもしれないけれど。
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