ROMANTICA~ロマンチカ~
「ありがとうございました」

 
涼輔の感謝の言葉に、武藤医師は微笑を返し、そばに控えていた執事の原島に言った。

 
「化膿していないし、縫い目も綺麗なものですよ。

しばらく、お風呂はやめて下さいね。身体を拭くだけにして下さい」
 

「はい、かしこまりました」
 

原島が武藤医師をドアまで見送って間もなく、医師が戻って来た。
 


「お見舞いだよ」


 
原島は顔に出さなかったものの、内心眉をひそめた。


昨日、涼輔が犬に噛まれた時に、一緒にいた女の子だ。


確かトキとかいう、鳥のような名前の子だ。


ブラッキィは、大人しい犬だ。


人に噛みついたことなど、今までに一度もない。


涼輔が怪我をしたのは、この子が原因なのではないかと疑っていた。
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