ROMANTICA~ロマンチカ~
車椅子には慣れていない。


こんなことなら、さっき診察してもらった時に、松葉杖のフィッティングをしてもらうのだった。

 
だが、壁伝いに歩いて、エレヴェーターまで行ければ、後は置き傘でも拝借すれば、何とかなるだろう。

 
時計を確認すると、それほど長い時間は経っていない。


終電はもうないはずだし、ケチだから、タクシーにも乗らないだろう。


遠くには行っていないはずだ。

 

「問題は、これか」
 


点滴を見やる。

もう、ほとんど終わっている。

じきに看護師か、武藤院長本人が来るだろう。

それまでには、病院を抜け出さなければならない。
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