ROMANTICA~ロマンチカ~
「イデッ! 何しやがる!」



「コージ」のイヤらしい手から、あたしは解放された。


 
声をかけてきた青年。


「コージ」のヒジの、ぶつけるとビリビリするあたりを一人の男がギュッと握っていた。


 
それが私立探偵、柳屋光(やなぎや・ひかる)との出あいだった。


 
自分の百六十ちょっとの身長を、百九十はあろうかという相手の身長と比べて鑑みたのかもしれない。



単につかまれた腕が痛かっただけなのかもしれない。



「コージ」はあたしをあきらめ、退散した。



 
「覚えてろ」 


という捨て台詞を吐き捨てて。
 

「独創性のないヤツだ」
 


あたしを助けてくれた人は、どこかとぼけたような口調で一人ごちた。
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