ROMANTICA~ロマンチカ~
「キャー、何これ、カワイイ!」

 
小さな胴着に身を包み、「突き」のポーズを決める氷室涼輔。

まだ子供子供していて本当に可愛らしい。

二十年ほどたって、あんなクールな男に育つとは、誰も想像できなかっただろう。


 
「これは、涼輔さまが五歳の時ですね。空手を習い始めた頃です」
 

「へぇ、空手習ってらっしゃるんですか」

 
「ええ、最近はご多忙で、なかなか道場に通うこともままならないとぼやいておられで
したが」


 
何枚か空手道場での写真が続く。


他のちびっこ空手家とともに「蹴り」や「突き」を練習する涼輔は、中でもぬきんでてカワイイ。
 

「あ、これは運動会? すごいじゃないですか、一番?」

小学校低学年くらいだろうか。

かけっこで一着のハタを手に写真に収まっている。



反抗期かしら? 「それがどうした」とでも言いたそうな顔をして写真に収まっている。

面白くなさそうな顔をした写真が続く中、ジャーマン・シェパードと一緒に写っている一枚だけは、表情が柔らかい。
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