ROMANTICA~ロマンチカ~
原島さんと二人でいる時は、氷室涼輔のことを「涼輔さん」って抵抗なく呼べているけど……


いざ、氷室涼輔本人と対面した時に、素直に「涼輔さん」って、呼べるかしら?



まだ知り合って間もないから、「氷室さん」くらいの方が呼びやすいけど……



でも、「氷室さん」だと、氷室涼輔パパも「氷室さん」なわけで……



そんなとりとめのないことを考えているわたしを尻目に、原島さんの説明がつづいた。



氷室家は旧華族(きゅうかぞく)で、江戸時代には大名だったらしい。

戦後になって華族制度が廃止され、次々と旧華族が斜陽になり没落していく中、氷室家は涼輔のおじい様の才覚のおかげで生き残れたらしい。


旧華族という人たちを、あたしは生まれて初めて見た。

 
家族写真に目が行く。


涼輔そっくりのおじい様(若い時の面影は十二分に留めているけど、厳しそう)におじ様、赤ちゃんの頃の涼輔を抱く若い女の人、お母様かしら?
 

綺麗な人。



線の細い感じで、いかにも美人薄命(びじんはくめい)って感じだ。

色素の薄いところは涼輔に似ているけれど、一番似ているのは、やっぱりおじい様だ。
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