年下の不良くん《番外編》
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しゃちょーさんと会わなくて、2ヶ月が過ぎた
久々に優美の兄、いわば田口から食事を誘われて、あたしは都心の居酒屋に来ていた
指定された居酒屋に着くと、田口はもう来ていて、よっと片手を上げて挨拶してくる
「久しぶりだなぁ、細川」
「口男(ぐちお)も久しぶりだね〜」
「いい加減そのあだ名やめろよなー」
中学の頃、優美の兄と知ったあたしは、この目の前のイケメンにいいあだ名をくれてやったのだ
「いいじゃん、なかなかセンスあるあだ名でしょ??
田口双子の男の方だから、口男」
「なんかよくグチグチ言ってるから付けられた、みたいな解釈にとられそうだしヤダ」
「うるさいなー、口男は口男なんだから文句言うなー
…あ、チューハイ1つとねぎまで」
注文を取りに来ていた定員に、注文を済ませてから、口男が先に頼んでおいてくれた枝豆を片手にトークが始まる
口男とは中3の時に席替えで前後になり、優美の兄と言うことも相重なり、急速に仲良くなった
でもあくまでも、友達として
当時のあたしには好きな人がいて、よく口男に話を無理やり聞いて貰っていたくらい、仲がいい
優美に似て優しいし、話しやすい雰囲気の持ち主だからかもしれない
「つーか、細川くらいだかんな、口男って呼ぶの」
「まー、大体は兄貴だよね」
「あー、それもヤダなんだよ
田口双子の兄貴の方って事で、そう呼ばれてっけど、極道みたいでさー」
「じゃあ基本、全て付けられてるあだ名嫌なんじゃん」
「そうなんだよー
普通に呼んでくれんの、地元でいねぇの…」
イケメンがしょぼくれると、何か心地いいのは何でだろう
「ドントマインド、口男」
他に新しいあだ名なんて、もう見つから無いから、このイケメンのあだ名はこれからも一生、口男でしかない