年下の不良くん《番外編》
「口男~もう恋愛とかやってけないよ〜」
日付が変わる数十分前に、あたしは口男の背におぶられて店をやっと出た
「お前、酒よえーくせに呑みすぎなんだよ
世話する俺の身にもなれ」
ゆらりゆらりと家路を歩く口男の背中は、傷心者のあたしにとっては温かくて心地がいい
「だって~呑みたかったんだもーん
たまにはいいじゃーん」
「だからって歩けなくなるまで呑むかふつー」
「でへへ〜
また今度何か奢るから許してよ〜」
「後で覚えてないとか無しだかんな」
口男はそう言って、ぶつくさ文句を言うけれど、ちゃんとおんぶをしてあたしの家まで歩いてくれている
「……だから好きなんだけどね〜」
「ん??何か言ったか??」
「んー…眠い…」
お酒のせいで瞼が重く、あたしはいつの間にかおぶられたまま、すやすやと眠ってしまっていた
───…………
「──んー…」
目が覚めると自分の身体は、ちゃんと布団の中にあった
きっとお兄ちゃんか誰かが、ここまで運んでくれたんだろうと自己完結をして、二度寝をしようと寝返りを打った
そこであたしはやっと、あることに気付いた
「…………自分の家じゃない…」
今さっきまで自分が寝ていた布団は、長年使っている布団より、高価そうで肌触りが最高だし、枕だって弾力性が抜群
ベッドなんかふかふかで、ダブルベッドだ
──でも、いったいここは何処…
昨日の記憶が途中で切れているあたしには、全く検討も突かず、一通り考えてはみるものの、さっぱりわからない