年下の不良くん《番外編》
───数日後……
せっかくの休みなので、今日は家でゆっくりする気満々だったのにも関わらず、お兄ちゃんからの一本の電話で台無しになった
「ホント、うちのお兄ちゃんはよく忘れ物するな~
ちゃんと確認して行かないからだ!!」
お兄ちゃんが忘れていった封筒と財布を片手に、あたしはお兄ちゃんの勤める会社に向かう
由りにもよって母親は不在中で、あたしは暑い中、電車とバスを乗り継いで辿り着いた
中に入ると丁度いい具合にエアコンが効いていて、ふーと溜め息をついてから、受付嬢のお姉さんにお兄ちゃんを呼んでもらった
「御呼びしましたので、来られるまであちらのソファーで御待ちくださいませ」
綺麗な白い手が差した先には、ふかふかのソファーが置いてあり、あたしは深くそれに腰かけた
「──あれ??
どうして結花ちゃんがここに??」
「わぁっ、しゃちょーさんっ!!」
後ろから聞き慣れた、大好きな声がしたかと思えば、つい最近出来たばかりの彼が、驚いた顔で立っていた
「君がどうしてこんな所にいるの??」
「お兄ちゃんがまぁた忘れ物したから、あたしが届けに来たんだ~」
「そうか、それはご苦労だったね
…あ、お兄さんがお見えだよ」
エレベーターから降りてきたお兄ちゃんは、しゃちょーさんを一目見た途端に、分かるくらいにかちんこちんに固まる
「しゃっ、社長!!
御早う御座いますっ…」
「ああ、御早う
優しい良い妹を持ってるんだな」
しゃちょーさんが言うには、社長という威厳を保つ為に、この喋り方が大切なんだって
大人の世界ってややこしいね
「そっ、そんなっ!!
勿体無いお言葉ですっ
…それよりどうして妹と一緒に…??」
「あれ??お兄ちゃん知らなかった??
しゃちょーさんはあたしの彼氏だよ??」
確かこの間、お兄ちゃんに話した気がするんだけどなぁ
「ばっか、お前んな冗談やめろよ!!
この間からそればっか言って!!
社長に失礼だろうが!!」
「…………」
…え、嘘…信用されてない…
まぁ、気持ちは分からなくもないけど、流石に傷つくから…