年下の不良くん《番外編》
兄妹喧嘩を止めたのは、しゃちょーさんのりんとした声だった
「──お兄さん、僕は彼女がいいんです」
その言葉を聞いた瞬間、あたしは発火するかと思った
「いやいやっ社長、お兄さんなどやめてください…!!」
「けど、結花ちゃんのお兄さんな訳だし…」
二人があーだこーだ始めたが、あたしは自分の事に必死で、話はループする一方
そんなきりがない話に区切りをつけたのは、エレベーターから突如降りてきた、鉄の仮面さんだった
「おい、貴様ら
受付から苦情の連絡が来たと思えば、仕事を放棄して談笑だと??」
かつかつとしゃちょーさんよりも、社長らしい威厳を纏った鉄の仮面さんが、近づいて来たと思えば、しゃちょーさんの耳をぐいっと引っ張る
「ちょっ、爽痛いってっ…!!」
「来るのが遅いと思ったら、誰がサボって良いといった」
「別にサボってた訳じゃないよ
ただ、彼女がここに居たから…」
「ほお、一丁前に言い訳か??
良い度胸をしている」
鉄の仮面さんにぎろりと睨まれたら、普通の人なら怖じ気づくのに、しゃちょーさんはにへらと笑う
「ごめんって~
今から仕事するから、手を離してよ」
渋々といったふうに手を離した鉄の仮面さんは、今度はあたしをぎろりと睨んだ