年下の不良くん《番外編》
田口優眞
「口男~、さっきのノート見せてー」
「何だよ、また寝てたのか??」
「違うよっ!!
前の席の人がデカイせいで、あたしが見えないんだってっ…!!」
「それはお前がチビなだけだろーがっ!!」
この席に席替えをしてまだ2週間なのに、後ろの細川は勝手に俺に変なあだ名を付けて、やたらと絡んでくる
「げっ…!!
口男、字汚なー」
そして、何かといじられる…
「うっせぇなー、じゃあ他の奴に借りろよ」
「いやもうめんどくさいし、別にいいよ」
黙々とノートを写し始める細川を眺めながら、後少ししたら来るであろう人物を待つ
「──結花ー、遊びに来たよ~」
別のクラスということを気にもせずに入ってくる、俺の双子の妹の優美
その優美と一緒のクラスで親友の、岡本りりかもやって来た
「あ、田口くんの字だね」
岡本に名前を呼ばれるだけで、俺の胸が弾む
こんな汚ないと言われる俺の字を、彼女はすぐに気付く
そりゃあそうだ、俺達双子と岡本は小学校からの友達
──けど、そう思ってるのは岡本だけ…
俺は一度たりとも、岡本を友達だなんて思った事はない
いつだって、岡本は俺の──好きな人…
「どうして結花が田口くんのノート持ってるの??」
「口男が無駄にデカイお陰で、黒板が見えないの~」
「じゃあ、優眞(ゆうま)にノート取らせたらいいじゃん
汚ない字もすぐに綺麗になるはずだから」
「うっせぇよ、馬鹿
自分が見れたらそれでいいんだよ」
どうしてこうも、兄弟って口五月蝿いんだろう
「ふふっ、面白いね二人とも」
けど、そんな兄弟の会話を、いつも楽しそうに肩を揺らして笑う岡本を見るのが、好きなんだ
彼女は、俺が好きな事に1ミクロンも気づいちゃいない
それもそのはずだ、岡本は俺をそんな風に想っていないから…