年下の不良くん《番外編》
───…………
「──ありがとうございましたー」
最後のお客さんの接客を終えて、店を閉める用意を始める
「おい、翔」
裏から出てきた兄貴が、にやにやしながら手招きしてきた
こういう時は、ほとんどが俺をからかう前だって事を、俺はこいつの弟だから知っている
「…んだよ、早く片付けろよ」
「いーんだよんな事今は
それよりさぁ、お前彼女出来たんだって〜??」
ほら来た、案の定俺をからかってきた
「…誰から聞いたんだよ」
「ん??武蔵に決まってんじゃーん♪
昨日ここに来てよ、お前に彼女が出来たって」
あんのお喋りマシーンめ
明日会ったら一発蹴りでもいれとかないと、俺の気が済まない
「お前に彼女が出来るとはね〜
お兄ちゃん嬉しいよ!!」
目の下に手を当てて泣き真似をする兄貴に、俺は無言で叩いた
「いったー!!
暴力はいけませんよ!!」
「晃がからかうからいけないんでしょ」
皿洗いをしていた千愛(ちえ)ちゃんが、裏から呆れた顔をして出てきた
兄貴の奥さんでもある千愛ちゃんは、ここでパティシエとして働いている
千愛ちゃんは兄貴より一つ下だが、兄貴が馬鹿なせいでか、年齢よりもしっかりして見える
「千愛〜、弟が暴力ふるう…」
「されるような事するアンタがいけない」
ぴしゃりと言い捨てられた兄貴が、もごもごと小声で文句を言うと、次は睨みがきて為すすべもなく押し黙った