ナムストーンPART2
「それでは研究発表を始めます。まず一番目に
ナムストーンの物理的天文学的考察と言うことで
ナセルベックハム博士、お願いします」

ナセルはまじめな顔をして語り始めた。

「ほんとに最初のストーンとの出会いからしてポーンと
車から放り投げたくらいですからそれはそれはまことに手荒な
扱いをして申し訳がないと深く今では反省をしています。

最初は何も分からないものですからかなづちでたたいてみたり
バーナーで焼いてみたり冷凍庫で凍らしてみたりしましたが
傷ひとつ尽きませんし硬度はかなり硬く熱にはめっぽう強い

物質だと思われます。放射性元素は皆無ですしX線はすべて
素通りしてしまいます。スペクトル分析ではその光の色が吸収
されるだけでまったく屈折が起こりません。自ら発光しています

が熱はまったく発生していませんのでいわゆる冷光と思われます。
発光源が何なのかどこに存在するのかさっぱり分かりません。
時々姿を消すのは瞬間昇華と考えられます。瞬時に空気中に

昇華して再び好ましい条件下の下に定位置に気体から液体を経ず
して瞬時に固体として顕現するようです。でなければ異次元との
交流としか考えられません。とにかくこの石は意思を持っています。

地球外の惑星においても物質の構成元素はほぼ同一のものですから
ナムストーンはいまだ未確認の輝石鉱物だと思われます・・・・・」

オサムオサナイはナセルの説明を聞きながら考えた。あるようで
ないようでそれでも間違いなく存在している。形は不明だが盛り
上がったい消滅したりする。感情とか心とか命とか自然治癒力とか

不可思議だが現に存在している。頭の中にもう一人の自分がいて
いつもしゃべっている。すぐ元気付けたり本音をわめいたりしている。

俺っていったい何なんだとあるとき気づいた。眠っている時の俺はどこ
にいるんだ?俺は何時からオサムオサナイなんだ?まったく不思議で
仕様がない。それともうひとつ。自分は間違いなくいつか死ぬということ。

この現実は厳しい。いつか肉体は滅ぶともこの一念や思いはどこへ?
眠った無自覚の状態が永遠に続くのか、それはどういうことだ?
よく考えてみればつい最近俺は生まれた。その前の記憶はないが、

本能的にずっと生命に刻み込まれた太鼓からの情報がある。それは
良心とか惜別とか激怒とか強烈なシチュエーションの時に感じる。
地球を50億年とすると人類の歴史何万年というのはそのほんの

顕微鏡的ミリ単位だ。数十年先には間違いなくこの自分は地球上には
いない。宇宙に溶け込むのか?ナムストーンが時折姿を消すように。
宇宙には意思があるように思えて仕様がない。自然治癒力や生命の誕生

は宇宙の意思の表れだ。傲慢な人類が邪悪の害毒をこの地球に垂れ流し
続けるならば必ずしっぺ返しが来る。などといろいろ思いをめぐらして
いるうちにナセルの講義は終わった。
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