ナムストーンPART2

研究発表5

水晶の玉の実態は術者の確信の増幅器だったようだ。
ナムストーンとはまったく性質内容が違う。
結論としてナムストーンは宗教ではないというものだった。

ここで休憩。五人はさらに寡黙になる。
オサムオサナイが言った。
「石の色が濃い緑色になっている。皆もそうだと思うので
五分間みんなでナムストーンを唱えよう」

「OK!」
全員が賛同して座りなおした。

パソコンの脇に各自ナムストーンを置いて小声で唱和する。
すぐ美しい合唱となってみるみるみんなの石はピンク色に輝いた。
数センチ浮かんでいたような気もする。

さあ今度はオサムオサナイの番だ。
まずはじめにこの16日の夜の大文字の送り火の由来を説明した。

さらに古書によるそれ以前からの、
『五山に火を放ち天空より舟を呼ぶ』の一説を紹介した。
皆身を乗り出して聞き入った。

「8月16日の夜に天空より舟を呼ぼうというわけかい?」
キーツが聞く。ナセルがすぐさま、
「どうやって舟を呼ぶんだい?」

「それを明日からの実験で決めるんだ」
みんなはなるほどと言ってうなづいた。

細かい実験のスケジュールはみんなの要望を振り分けて
この三日間すでに決まっていた。

「16日は今世紀最大の実験と言ってもいいほどの実験を
やりましょう。幸い前日はまとめで一日あいています。

三日間である程度の精密な実験結果を出して15日には
壮大なリハーサルをやってみようと思います」

そう述べて締めくくりにオサムオサナイは
ナムストーンの予知力に触れた。

「午前中のケムンの光る石に関しては何らかの人類的な
危機に際して警告を発するような気がしてなりません。
詳しい発光の記録を照合してみなければ分かりませんが

ナムストーンとも何かの関連はあるものと思われます。
とするならば訓練すれば皆何らかの予知が可能になる
ような気がします。

現に私は仲間が危機の時にはどうも胸騒ぎがするようです。
では以上で私の研究発表を終わります」

休憩に入った。トイレに行ったりコーヒーを沸かしたり。
レイがオサムに聞いてきた。

「予知のときってどんな風になるの?」
「時間がなくて説明できなかったけど、まず胸騒ぎがして石を
見ると濃いグレイに沈んでいていくら祈っても明るくならないんだ」

「いくら祈っても明るくならないの?」
「レイの王宮での事件の時にはまだそういうことはなかったんだけど」

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