冬桜 −二度咲くモノ-
沈黙が流れて行く。


いても立ってもいられず来たのに、何を話していいかわからない。


どれくらい時間が経っただろう。


不意に聖が話し始めた。

「蘭さん、僕ね、先日撮り終えた映画が、多分最後の仕事になりそうです。
山村さんの会社の仕事、楽しみだったんだけどなぁ。」


「えっ?でも、しっかり休養取れば・・・・。」

と言いかけたが、聖は自分の寿命を感じている。


それ以上、言葉が続かなかった。


「今から、僕は卑怯な人間になります。
怒ってもいいんで、聞いていてくれますか?」


私は、ただうなずいた。
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