歪み

「俺さ、橘さんには悪いけど
速水みたいな奴嫌いなんだわ」


ぽつりと吐き捨てた言葉が
あたしに突き刺さる。
時たま見せる佐野有の影。
もうわかんないよ。
どこまでが本性?

「好き…じゃないよ、拓の事」

「え?今何て…」

佐野有が驚いた表情であたしを見る。

「拓の事、好きじゃないよ」

言った瞬間、恥ずかしくなった。
何言ってんのあたし。

「ごめん、もうそろそろ時間だから帰らないと」

「え、じゃ俺も…」

「いいから!じゃあね」

逃げるように図書室を後にした。


< 102 / 274 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop