歪み
「俺さ、橘さんには悪いけど
速水みたいな奴嫌いなんだわ」
ぽつりと吐き捨てた言葉が
あたしに突き刺さる。
時たま見せる佐野有の影。
もうわかんないよ。
どこまでが本性?
「好き…じゃないよ、拓の事」
「え?今何て…」
佐野有が驚いた表情であたしを見る。
「拓の事、好きじゃないよ」
言った瞬間、恥ずかしくなった。
何言ってんのあたし。
「ごめん、もうそろそろ時間だから帰らないと」
「え、じゃ俺も…」
「いいから!じゃあね」
逃げるように図書室を後にした。