歪み

「ねぇ拓。知ってる?
紅梨のメールアドレスも電話番号も
変わっちゃったんだよ。
あの家にも紅梨はいない。
いないの、何処にも」


拓の顔に動揺が走る。
やっぱり知らなかったんだ。

「あたし、親友とか言っといて
紅梨のこと何にもわかってあげられなくて
返って傷付けちゃった…
最低だよね」

お願い。
最低だってあたしを突き放して。

ふわっと爽やかな柔軟剤のような香りに包まれる。
ぽんと頭の上に大きな手が置かれる。

「最低なんかじゃない。
真柚のせいじゃない。
だから…そんな辛そうな顔しないでくれ。
また笑って欲しいんだ」

駄目、優しくしないで。
そんな資格あたしにないの。
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