歪み
「真柚、来たんだ」
「…お母さんが行けって言うから」
「言いそうだなおばさんなら」
明らかに気を使って話してくれているんだろうな。
相変わらず優しい。
そういうとこが好きだったんだもんね、あたし。
でももうそれは過去だから。
前に進まなきゃ。
やっと、そう思えた。
「拓…あたしね、
やっぱり佐野君が好きなんだ」
少し前を歩いていた拓の足が止まる。
あたしからは背中しか見えないけど、
今拓はどんな顔をして何を思っているんだろう。
そう思うとまた怖くて逃げ出したくなる。
だめ。けじめ、付けるんだから。