歪み
沈黙を破って振り向いた拓。
あの時の顔だった。
辛そうで見てられないような顔。
試合で負けた時も皆を励まして
辛そうな顔一つしなかった拓。
その拓を苦しめてるのはあたしなんだ。
「…ごめん。最低だってわかってる。
利用したって言われても当然なことしたって。
でも、今も変わらず拓はあたしにとって
大事な人なの。
紅梨みたいに離れていって欲しくないの」
何を言っているのか分からなくなってきた。
けど、何処か冷めたあたしがいて 。
そいつが叫ぶ。
お前は最低だと。
拓の優しさに甘えておいて佐野有を選んだ。