歪み
重たい足を引き摺って保健室の扉に手を掛ける。
「あれ?橘さんじゃん。何してんの?」
ふっと背後から能天気な声が聞こえた。
振り返ると茶色の猫っ毛の男子。
「…誰ですか?」
あたしこんな人知り合いじゃない。
「あー俺の事知らないか。
えっと、俺は伊東 和樹。有の友達ってとこ」
佐野有…友達いたんだ。
しかもすっごい人懐っこくて柔らかい人。
でも、全然掴めない。なんか怖い。
「どうせなんか有がやらかしたんでしょ」
そう言って笑うと
ふわっとあたしの肩を抱いて扉を開けた。
自然過ぎて振りほどけない…。