歪み

拓の優しさがじんわりと
あたしの心を溶かしていく。
なのに、佐野有に会いたくてたまらない
あたしがいる。

後ろめたい感情があたしを蝕む。
このままじゃきっとあたし
また拓を利用してしまう。
あたしを取り巻く世界が歪んでいく。


「真柚、佐野有を好きでいいから…」

「駄目っ」


拓の言おうとしていることはわかっている。
けど、そんな事拓に言わせたくないよ。

「そんな事…言わないで」

「俺、無理だよ。
そんな辛そうな真柚なんて見てられない。
全部受け止めるから」

頬に手が触れる。
小さい頃から知ってる、
大きくて優しい手。


あたしには、
その手に触れてもらえる資格なんてない。

「…ごめん、ごめんね。拓…」
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