歪み
初夏の湿気を含んだ風が
あたしを現実に連れ戻す。
「…ごめん、拓。
やっぱりあたし…駄目だ」
拓の腕が離れた途端
心細さがあたしの心を埋め尽くす。
駄目。拓にすがっちゃ。
こんなの利用しているだけ。
結局拓を苦しめてしまう。
「ありがとう。慰めてくれて」
辛くてそのまま走って家に帰った。
幸いなのかお母さんは帰ってこない日だった。
ご飯なんて食べる気にならなくて
お風呂に入って布団に倒れ込んだ。
「…っ」
訳もわからずただ涙を流した。