歪み
ぽん、と肩に手を置かれた。
どうして和樹君が
そんな哀しそうな目をしているの…?
何を考えているのかわからない。
「良く聞いて。
真柚ちゃんがそんなに思いつめたところで
何も変わらない。
真柚ちゃんが一番伝えたかったことは?
伝えたかった人は誰?」
すとんと心に響く。
不思議。
拓とは違う暖かさがあたしを包む。
「わからない、じゃなくて
自分のしたい事だけ考える」
「…うん…っ」
じんわり霞む視界。
もう歪んで見えないよ。
「ありがとう…和樹君」
「あいつ、どう仕様もない馬鹿だからね。
その分いい奴なんだけど」
「ん、知ってるよ。好きだから」
風がふわっとあたしの背中を押す。
柔らかく微笑んだ和樹君に手を振る。
「有、さっき帰ろうとしてた。
きっとまだ間に合うよ」