歪み
ー和樹sideー
潤んだ瞳で真っ直ぐ前を向いて
走り去る後ろ姿を見ていた。
「ったく今度奢れよな、有」
人のために何かするって大変だ。
こんな事して消せるわけじゃないけど。
“私は気にしてないよ。
だからもう自分の事許してあげてよ。
どうしても許せないって言うなら
私じゃない誰かを幸せにしてあげて。
そしてその話を私にして。
…それでいいでしょう?
これ以上和樹君が苦しんでいるの見たくないよ”
あの時の哀しそうな目が
今でも忘れられない。
たまちゃん、
君はちっとも幸せになんかなってない。
何より君に幸せになってもらいたいのに。
プルルルル…
「あ、もしもし。
たまちゃん。今日会いにいっていい?」