歪み
ー有sideー
「おい、和樹。どういう事だよ。
何だよ決着つけろって」
こいつが何考えてんのかわかんねぇ。
「だから、その言葉通り。
折角のチャンスだったのに」
腹立つ。何だよそれ。
「そうだな、
俺が諦めるにはいいチャンスだったよ」
だりーな。
この後瑞穂に合わなきゃなんねーし。
今更何の用だよ。
「有、いいんだな。それで」
…わかってる。
本当は速水なんかに渡したくない。
“好き、だよ”
あの言葉を忘れられる訳もない。
あのままずっと腕の中にいて欲しかった。
手放したくなかった。
けど、それ以上にあの瞳に溺れるのが
怖いんだよ。