歪み

03


「言い訳とかじゃないんだけど
私ねお父さんが大好きだったの。
結婚するんだって思ってた。


でも、死んじゃったの。
くも膜下出血でね、
倒れたときはもう遅くて。
それからお母さんも抜け殻みたいになって
仕事ばかりの仕事人間になっちゃって。
気付いたら私は心のどこかで
お父さんを求めてた。
馬鹿みたいでしょ。
いつまで経っても子供のままで。
背中を向けられるとしがみつかずには
いられないの。

亮さんね、お父さんにそっくりなの。
…呆れるでしょ。
そんな理由で一目惚れだなんて。
その時から誰といても
寂しいて思うようになったの。
そんな頃にね、有に出会ったの。
片親っていうのが私と一緒だなと思って。
ほんと、そんな些細な事だった。

私の気まぐれで有の事傷付けた。
ごめんなさい。
許してなんて言わないけど、
有だけだったんだ。
ずっと一緒いたいって思えたの。
本当。嘘じゃない。
私が気付かなかったの。



私に必要なのはお父さんに外見が似てるとか
雰囲気が似てるとかそんな人じゃなくて
私の事を大切にしてくれて、
一緒にいたいと思える人だった。
有と居て寂しいなんて思わなかった。
私…ずっと幸せだった。

ありがとうって言いたかったの。
都合良いって思うよね、ごめんね」

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