歪み


そっと瑞穂の手が離れた。

「それだけ、言いたかっただけだから。
もう有とは合わない。
最後まで勝手でごめんね」


「で、も瑞穂…
あいつとはどうなったんだよ」


いつの間にか潤んでいた瞳は
乾いて、凛としていた。
その瞳に何故か動揺が走る。

…ん、何なんだよ俺。
さっきからぐるぐる
橘さんの言葉が頭の中たこだまする。

“好き、だよ”

“所有者になる気はないから”

“振るなら…ちゃんと振ってよ”


「あいつって亮さん?」

少し驚いた顔をして
恥ずかしそうに笑った。

「振られたよ、それでわかっちゃった。
私がずっと好きだったのは
幻想の亮さんで本当に好きだったのは
有だった。
気付いた時はもう遅くて
何回泣いたかわかんないけど、
自業自得だね」


…嘘、だろ。

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