歪み

「さっ佐野有!」

「はい」

マジでどうしたの橘さん。
そんなキャラ?
いつも無表情で儚い感じはどうしたの?

「…っ」

「えぇ!?」

がばっ。
気付いたら俺の胸に抱きついく橘さん。
何何っほんとわかんないんだけど。
取り敢えず混乱…。
それに心臓もばくばくしてるし。


「下駄箱に瑞穂さんからの手紙が入ってて
全部知ったの。
今まで無神経で…ごめんね。
瑞穂さんね前から和樹君と話して
最初は手紙を渡すだけのつもりだったんだって。
でもなんか和樹君が色々考えて…
今日みたいになった、らしい」


俯いたまま話すから橘さんの声が
少しこもって聞こえる。

「うん。和樹のやつ、ふざけてんな」

「違う。和樹君のお陰でしょ、馬鹿。
あたしっ嬉しかったんだから。
ずっと好きだったんだから。
なのに…

逃げるなんて…ずるいよ。
辛いよ」

微かに震える声が愛おしく感じる。
間に合うのかな。

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