歪み

そう言った紅梨の顔はさっきと違い
清々しかった。

｢紅梨、俺実は少し紅梨の事疑ってた。
ごめん。
けどもう噂なんて気にしない。
だから大丈夫｣

｢拓は…馬鹿だよっ
馬鹿でお人好しだよ｣


ぶっきらぼうに言っても
照れ隠しのように聞こえた。
赤い目を必死にこすって、
泣けばいいのに泣かない。
何だか真柚みたいだった。

｢紅梨さ、泣きたい時位泣けばいいのに。
別に俺慰めたりとか出来ないけどさ。
どっか行って欲しかったら行くよ｣

そう言うと紅梨はぽかんと俺を見上げた。
そして見る見る目に涙を溜めて
ぐしゃぐしゃになって泣き始めた。

｢…っ行かないで…｣

そう言う姿はひどく幼く見えた。