歪み
「今日ね、紅梨がね…」
たまたまその日、
俺は何故か機嫌が悪かった。
俺が好きなのは昔も今も真柚で。
今の関係を壊すのが怖くて言えなかった。
が、たまにもどかしくなる。
なりふり構わず言ってしまいたくなる。
「真柚、紅梨の話はもういいから。
何でそんなに紅梨、紅梨言うんだよ。
今ここに紅梨がいないから?」
「別に、そういう訳じゃ…」
突然の事に驚いたのだろう。
微かに眉をひそめて探るように
俺を見る凛とした瞳。
しまった、って思っても遅かった。
「何でわざわざいない
紅梨の話聞かなきゃいけないわけ。
いい加減うんざりなんだけど」
自分でも酷い事言ったと思う。
「…ずっとそんなこと思いながら
あたしと紅梨と話してたの?」
さっきより瞳が鋭くなる。
珍しく真柚が怒っていた。
当たり前だ、あんな最低な事言ったんだ。
違うんだ、なんて言ったって意味ない。