歪み

「あの、紅梨…その俺は」

「俺が好きなのは真柚、だって?」


紅梨が悪戯っぽく微笑んで言った。
思わぬ言葉にまた困惑する。
どういう事だ?

「わかってるよ、そんなこと。
だから付き合って下さいなんて言わないよ。
本当は言うつもりなんて無くて、
うちが拓の事好きって言ったら
真柚はどうするんだろうって…
それで真柚に言ったの、最低でしょ?」

また、だ。
また紅梨は感情を殺す。
自分に蓋をして平気なふりをする。

「こんな事…真柚に言わないでよね。
うち真柚に救われて友達になりたいって
そう思ったのに。
いつの間にか憎んでた。
うちのないものを全て持っている気がして
拓だけでも渡したくないって思っちゃった」

無表情で話す紅梨からは
痛みさえ感じる。

「…俺には紅梨の事最低とか言う資格ねーよ。
真柚だってそんなこと言われて
嫌いになるような奴じゃないだろ。
だから、そんな苦しいの隠そうとすんなよ」

そう言うと紅梨は顔を歪めて
苦しそうに笑う。

「っかんないんだよ、
拓にも真柚にも…っ。
わからないよ、あんたたちに
うちの気持ちなんて…
簡単に隠そうとすんなとか言わないでよ」

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