歪み
5,溝
紅梨が一体真柚に何を言ったのか
それを知ることは出来ない。
何を言ったとしても…
紅梨を責めることは俺には出来ない。
紅梨は休みがちになり、
真柚は笑顔が消えた。
紅梨が真柚といなくなるにつれ
真柚の周りにはクラスの中心的な女子が
集まっていた。
真柚は会話に加わるでもなく
作った笑顔を浮かべる。
真柚の笑顔が変わったのに気付いているのは
俺と紅梨位だろう。
「だから早くしろって言ったのに。
馬鹿だよなーお前も。
何なら橘奪ってやろうか?」
「…俺振られたし」
「…ったくほんと馬鹿野郎だなお前。
奪えるわけねーだろ、俺が。
冗談に決まってるだろ。冗談」
相変わらず無表情で
ずけずけ俺に言ってくる高見。
ほんと馬鹿だな、俺。