歪み


♪白い光のなーかに…


皆の合唱が遠くに聞こえる。
視界に映る真柚の瞳には
寂しさも清々しさもなく無だった。
別に驚く事なんてない。
いつだって真柚は学校とか友達とかに
思い入れなんてないって言ってたじゃないか。
小学校の時と何の変わりもない。


そう思いたいのに、
集団の中にぽつりと異空間を放つ空席。
昨日は学校に来てたのに。
せめて卒業式位来いよ、紅梨。


なのに俺とは話に来るってなんだよ。
真柚の事避けたいから?
もしかしてまだ…
いや、何馬鹿なこと考えてんだ、俺。

「寂しくなるなー拓よぉ」

「高校まで橘さんと一緒とか何だよお前」


何だかんだ結構楽しかったな、中学も。
と思いながら空席を見ると後悔が押し寄せる。
誰のせいでもない。
あの時…、何て考えない。

今日で終わらせるんだから。

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