歪み
複雑な感情が渦巻く。
正直、紅梨と何を話せばいいかなんて
わからなかった。
ただ、話さなくてはいけない。
終わりにしなくてはいけないと、
それだけだった。
紅梨が突きつける真実が残酷だろうと、
俺は引きずっている訳には行かないんだ。
きちんと前を向く。
覚悟なんて出来てないけど、もう迷わない。
自分で答えを出す。
「…早かったね、拓」
どきりと鼓動が早まる。
まるであの日を再現するかのように
同じワンピース姿の紅梨。
「いつから、いた?」
「別にいつでもいいでしょ。
早く来たかっただけ。気にしないで」
紅梨は俺に欠片だけ晒して
肝心なところは教えない。
パズルを自力で解けと試しているかのよう。
「今日来なかったな」
「聞いてないんだ、昨日の事」
「昨日の事?」
訳がわからない。昨日…昨日…?
もしかして真柚が先に帰ってって…あれ、か?
「昨日さうちと真柚、話したんだ」